糖尿病患者にとって炭水化物は毒なのか?
3大栄養素である炭水化物だが…
炭水化物は「たんぱく質」「脂質」と共に3大栄養素に数えられる体に無くてはならない重要な栄養素です。
炭水化物は日本人にとっては非常に身近な主食である「白米」を筆頭にパンやうどんなどの小麦や麺類、芋、穀物などが該当し、多くの方は毎食ご飯やパン、麺類など何かしらの炭水化物を摂取しているのではないでしょうか。
日本においては糖尿病患者向けの食事でも1日およそ1600kcal前後のカロリーの内50~60%を炭水化物で摂取することを推奨しています。
しかし炭水化物は糖質の塊でもあり血糖値を上昇させる大きな要因である事は間違いなく、低糖質や低炭水化物の糖尿病食を推奨する動きもあります。
一部では「炭水化物は毒」とまで言い放つ人もいるなど、糖尿病やダイエットと炭水化物・糖質には賛否両論ありますので、その辺を少し見ていきましょう。
なぜ炭水化物を悪とする風潮があるのか
炭水化物は体のエネルギー源である糖質に変わり、とりわけ脳はブドウ糖のみを栄養源とするため一般的に炭水化物は体にとって欠かせない栄養素といわれます。
しかし炭水化物を毒とする意見では…
- ■脳のエネルギー源は糖質のみではなくケトン体もある
- ■炭水化物を摂るとむしろ低血糖が起き脳に栄養が行かなくなる
- ■炭水化物や糖質を摂らなければ血糖値は上がらない
- ■糖質を摂らなくてもたんぱく質と脂質がエネルギー源になる
- ■炭水化物を摂取しなくても肝臓による糖新生でエネルギーは作られる
- ■糖質には中毒性がある
…といったものが目立ちます。
確かにこれだけ見るともっともらしく感じますし、炭水化物や糖質を制限すれば急激な血糖値上昇が起きないのは確かです。
急激な血糖値上昇によってインスリンも大量に分泌される事になりますが、それは時に血糖値を下げすぎてしまう低血糖を引き起こしがちで、これが脳の機能を低下させるとの事。
一方低糖質・低炭水化物の食事では血糖値の大幅な増減はなく安定的し、脳のエネルギーが足りない場合は脂肪を分解しケトン体生成、脳はケトン体からエネルギーを取り出す事から糖尿病予防や治療はもちろんダイエットにも良いというのです。
そう考えると確かに糖質や炭水化物を摂る必要はなさそうです。
■糖質を摂らなければ急激な高血糖は起こらず揺り戻しの低血糖も起こらない
炭水化物は毒という考え方に感じる違和感
とはいえ「炭水化物は毒」「炭水化物を摂る必要はない」というフレーズを見聞きしてまず感じるのは正直に言うと「気持ちの悪さ」。
例えば「肉は大腸がんなどを引き起こすから毒」「肉は毒素の元」として一切肉を食べないベジタリアンやヴィーガンと呼ばれる人達がいますが、これも同様にある種の気持ち悪さを感じずにはいられません。
なぜ“白”と“黒”だけでしか判断できないのかと。
タバコやお酒なら確かに毒と言っても差し支えないのかもしれませんが、炭水化物や肉まで毒と決め付け排除する動きは「何かに取り憑かれている」としか思えず、炭水化物や肉の悪い面や食べ過ぎによる悪影響のみを切り取り叩いているようにしか見えないのです。
上記の「炭水化物を摂らなくてもケトン体や肝臓による糖新生でエネルギーは作られる」という話を聞いても、「そんな回りくどい事をすれば別のところに負担がかかるのでは?」と感じますし、糖質を摂る事によって急激な血糖値の上昇が起きるというのであればご飯などの食べる量を少なめにしたり、糖の吸収を穏やかにする野菜を先に食べる食事法を用いたりすれば良いのではないでしょうか?
頭ごなしに炭水化物や肉を否定する人というのは、大量に食べる事を前提としたデータを持ち出して「悪い」と決め付けている印象しかなく、ある種の宗教的かつ盲目的な妄信を感じざるを得ません。
書籍などでは本を売るためによりインパクトの強い題名を付ける傾向にあるので、そういった商売的な狙い…というか悪意も見え隠れします。
炭水化物は積極的に食べるべき?
個人的に「炭水化物は毒」という考え方に気持ち悪さを感じるのは上記のとおりですが、勘違いして欲しくないのは、「炭水化物を積極的に摂るべき」というつもりは毛頭ないという点で、私自身朝食は0.5合程度の白米を食べるものの、夕飯では日によって白米やパンなどの主食は摂らずおかずのみにする事が多くなっています。
というのも、日本糖尿病学会では糖尿病患者の食事として1600kcal前後のカロリー摂取の内50~60%を炭水化物で摂るべきとしていますが、正直これは多すぎるのではないかと感じている一方、糖質制限食を提唱する方は炭水化物を10%台に抑えるべきという意見が多く、これでは少なすぎると感じているからです。
糖尿病予防や治療の観点から炭水化物をはじめとする糖質の摂り過ぎが良くない事は間違いないものの、ブドウ糖は体の最重要エネルギー源でもあり、それをもっとも効率よく摂取できるのは他でもない炭水化物です。
結局は程度の問題で、例えば体に良いとされる納豆や豆腐などの大豆製品ですら食べ過ぎればセレンやプリン体などの過剰摂取となり悪影響があるように、ひとつのものを過剰に摂れば悪い面も出てきます。
炭水化物を大量に摂取すれば体にとって「毒」である事は間違いないものの、エネルギーが不足している方にとって炭水化物や糖質の摂取は非常に効率のよい栄養食でもあり、つまりは「生命を維持する薬」でもあるのです。
これはあくまでも両極端な話ですが、私達はその中間…つまり急激な血糖値上昇など体に悪影響がない程度の量に留めれば良いのではないでしょうか。
「バランスの良い食事を」とは昔から言われている使い古された言葉ですが、様々なデータが示され都合の良いものだけを抽出し叩く事ができる現在より、脈々と受け継がれるこの言葉にこそ真実がある気がします。
血糖値を下げダイエット効果もあるSGLT2阻害薬
これといった自覚症状がないままじわじわと血管を蝕み続ける糖尿病。それだけに健康診断などで血糖値やHbA1cの高さを指摘されても放置している人は驚くほど多く存在するのが実情。
糖尿病治療は本来であれば食事療法と運動療法を軸に、補助としてインスリン注射や経口薬を用い血糖値を正常値もしくはそれに近い数値での安定を目指します。
そうすることで体重の減少・維持と血糖値・HbA1cの効果が望めるから。しかし現実問題として食事制限や運動療法は決して楽なものではなく、またそれを一生続けなければならないという終わりなき苦行でもあります。
そういった背景に加え、受診するのが面倒くさい、行くたびに医師に「痩せなさい」と言われる…などの理由から病院から足が遠のいている人も多いのではないでしょうか。
しかし、当サイトで口を酸っぱくして述べているように、糖尿病は様々な合併症を引き起こす極めて恐ろしい病気です。血糖値が高い状況はもちろん、糖尿病リスクを高める肥満も放置するべきではありません。
もしどうしても病院に行きたくない場合は、個人輸入代行業者を通じ、日本でも処方されているSGLT2阻害薬「フォシーガ」を購入するという方法も。
SGLT2阻害薬は血液中の糖を積極的に尿と一緒に排出するという画期的な糖尿病治療薬。
従来の経口薬のように細胞内に糖を取り込むインスリンに頼ることなく血糖値を下げられるため、1日250~400kcal相当のダイエット効果があることが複数の臨床試験で実証されています。
それだけに健康な人がダイエット目的で使用する事例が後を絶たないほど。
本来であれば医療機関を受診し、適切な治療と指導を受けたうえで治療薬を処方してもらうべきところ。しかしそれができないようであれば、最低でもフォシーガなどで血糖値や体重の低減を図ってほしいと感じています。
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