ゼロカロリーのジュースなら飲んでも大丈夫?
ジュースを飲みたいがカロリーや血糖値が心配
糖尿病になると厳密な血糖コントロールが求められると共に、1日のカロリー摂取量も制限されてしまいます。
そうなると食べ物はおろか飲み物にも気を使わなければならず、気軽にジュースを飲むこともためらわれてしまうでしょう。
しかし昨今は健康志向の高まりなどによって「ゼロカロリー」「糖質ゼロ」のジュースも増えてきており、これらなら気軽に飲めるのではないかという期待も。
果たして糖尿病でもゼロカロリーや糖質ゼロのジュースならカロリーや血糖値を気にせず飲めるのでしょうか?
ジュースはどのくらい血糖値を上昇させるのか
ゼロカロリーや糖質ゼロのジュースの話題の前に、まずは一般的な普通のジュースを糖尿病の人が飲むとどのくらい血糖値を上昇させるのかについて取り上げましょう。
ジュースの王様ともいえるコカコーラで考えてみましょう。
普通のコーラのカロリーは100mlあたり45kcal、炭水化物は11.3gなので…
- ■350ml缶で157kcal、炭水化物は39.5g
- ■500mlペットボトルで225kcal、炭水化物が56.5g
ちなみに500mlの炭水化物56gというのは軽めのご飯茶碗一杯分の量に相当。
健康な方であればコーラを1本飲んだところで即座にインスリンが分泌され血糖値が140mg/DLを超えることはほとんどありませんが、糖尿病の人の場合インスリンの分泌量や効き目が落ちているため、ぶどう糖という非常の吸収の早い甘味料を使うジュースを飲むことで血糖値は跳ね上がり飲む前に比べ100mg/DL以上上昇することも珍しくありません。
特にコーラは清涼飲料水や炭酸飲料の中でも炭水化物量が多く、血糖値を上昇させやすいものとなっているのです。
■糖尿病の人がコーラなどを飲むと100mg/DL以上血糖値が上がることも
ゼロカロリーや糖質ゼロは必ずしも「0」ではない
ゼロカロリーのコーラはカロリーはもちろん糖質もゼロであり、これを見る限り糖尿病でもカロリーや血糖値を気にせず飲めるような気がします。
しかしカロリーゼロや糖質ゼロにはちょっとしたカラクリがあり、100mlに含まれる量が以下の範囲に収まっていれば「ゼロ」と表示してよいことになっています。
- ■カロリーゼロ 5kcal未満
- ■糖質ゼロ 0.5g未満
- ■炭水化物 0.5g未満
これはカロリーが5kcal未満であれば「ゼロカロリー」を名乗っていいのみならず、上図のように「0kcal」と表示していいという意味で、この図ではエネルギーや炭水化物、糖類は「0」と表示されていますが、実際はエネルギーなら4.9kcal、炭水化物や糖類は0.49gである可能性があるのです。
つまりゼロカロリーだから、糖質ゼロだからといってカロリーや血糖値をまったく気にしなくていいということではありません。
■糖尿病の人がコーラなどを飲むと100mg/DL以上血糖値が上がることも
ゼロカロリーのジュースで血糖値は上がるのか?
さて、それを踏まえ普通のコーラとゼロカロリーのコーラ、そして多くの男性が飲むであろう缶コーヒー、スポーツドリンクなどの血糖値上昇を、糖尿病の疑いがある人で見てみると下図のようになります。
糖尿病の疑いがある場合インスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性によって血糖値を下げづらい状況になっていますので、不用意にコーラを飲もうものなら急激に血糖値が上昇してしまう可能性があります。
あくまでも平均的な例として、健康な方であれば糖質1gに対し血糖値が約1mg/DL上昇するとされ、糖尿病の90%以上を占める2型糖尿病の場合、糖質1gで血糖値はおよそ3mg/DL上昇します。
上図のグラフはこれを当てはめたものに近い数値となっていますが、これはあくまでも平均であり個人差によってこれほど上がらない人もいれば、これ以上に上昇する人もいます。
一方注目して欲しいのがゼロカロリーのコーラで、血糖値の上昇はほとんど見られません。
仮にゼロカロリーのコーラに「0」と表示できる上限である100mlあたり0.49gの糖質が含まれていたとしても500mlペットボトルであれば血糖値の上昇幅は2型糖尿病の方でもおよそ7.35mg/DLなので、食事の合間にジュースを飲みたい場合はゼロカロリーや糖質ゼロの飲み物を選ぶと安心できます。
カロリーに関しても500mgのゼロカロリー飲料であれば最も多いケースでも24.5kcalとなりますので、多量に飲まない限りはあまり心配する必要はないでしょう。
■500mlのカロリーゼロのジュースはどんなに多いものでも25kcal弱しかない
カロリー、糖質ゼロだからといってがぶ飲みに注意
これまで書いてきたようにゼロカロリー、糖質ゼロの飲み物は糖尿病の方にとって非常に心強い味方といえます。
ただし、糖質やカロリーが「0」といってもわずかながら含まれているのは間違いなく、大量に飲めば血糖値上昇やカロリー過多を引き起こしますし、また一部ではこういった飲料に使われる人工甘味料を危険視する向きもあります。
いわく、サッカリンという人工甘味料を多量に摂取させた場合の腸内細菌に悪影響を与え耐糖能が低下、血糖値が上がりやすい状況になり糖尿病が悪化するというものですが、これは一部の偏った実験によって証明された感もあり、また人工甘味料を使ったカロリー、糖質ゼロ飲料を肥満や糖尿病の改善に役立てている実績もあるので微妙なところ。
昔から人間は「人工」と名の付く食物を毛嫌いする傾向にあって、それを異常なまでに危険視する人が少なからずおりますが、個人的にはゼロ飲料を上手に利用するのは決して悪いことではないと感じています。
ただし、どんな食品も食べすぎは体に毒なので、ほどほどにしましょうね。
血糖値を下げダイエット効果もあるSGLT2阻害薬
これといった自覚症状がないままじわじわと血管を蝕み続ける糖尿病。それだけに健康診断などで血糖値やHbA1cの高さを指摘されても放置している人は驚くほど多く存在するのが実情。
糖尿病治療は本来であれば食事療法と運動療法を軸に、補助としてインスリン注射や経口薬を用い血糖値を正常値もしくはそれに近い数値での安定を目指します。
そうすることで体重の減少・維持と血糖値・HbA1cの効果が望めるから。しかし現実問題として食事制限や運動療法は決して楽なものではなく、またそれを一生続けなければならないという終わりなき苦行でもあります。
そういった背景に加え、受診するのが面倒くさい、行くたびに医師に「痩せなさい」と言われる…などの理由から病院から足が遠のいている人も多いのではないでしょうか。
しかし、当サイトで口を酸っぱくして述べているように、糖尿病は様々な合併症を引き起こす極めて恐ろしい病気です。血糖値が高い状況はもちろん、糖尿病リスクを高める肥満も放置するべきではありません。
もしどうしても病院に行きたくない場合は、個人輸入代行業者を通じ、日本でも処方されているSGLT2阻害薬「フォシーガ」を購入するという方法も。
SGLT2阻害薬は血液中の糖を積極的に尿と一緒に排出するという画期的な糖尿病治療薬。
従来の経口薬のように細胞内に糖を取り込むインスリンに頼ることなく血糖値を下げられるため、1日250~400kcal相当のダイエット効果があることが複数の臨床試験で実証されています。
それだけに健康な人がダイエット目的で使用する事例が後を絶たないほど。
本来であれば医療機関を受診し、適切な治療と指導を受けたうえで治療薬を処方してもらうべきところ。しかしそれができないようであれば、最低でもフォシーガなどで血糖値や体重の低減を図ってほしいと感じています。
あわせて読みたい関連記事
糖尿病患者の平均寿命は健康な方に比べ平均で10年短いと言われています。しかしそれはあくまでも「平均」であり、しっかりとした治療を行い血糖値をコントロールできれば健康な方と変わらない寿命を全うできます…続きを読む
糖尿病の多くは血液検査での血糖値やHbA1cの数値で発見されますが、これらの数値が正常であるにもかかわらず高血糖の時間が長い「隠れ糖尿病」の場合があります。隠れ糖尿病は空腹時血糖値では表れづらいものの、食後に血糖値が跳ね上がり減少も緩やかという…続きを読む
糖尿病の診断するのに用いられるのは血糖値とHbA1cで、それぞれには明確な基準があります。10時間以上絶食し測る空腹時血糖値は126mg/dL以上、HbA1cは6.5%以上という基準を両方満たせば糖尿病と診断され、片方の場合は再検査を経て判断することに…続きを読む
糖尿病は全身の血管にダメージを与え血流を悪くする上に免疫力も低下するため歯周病の原因になります。そしてその歯周病から歯周病菌が血管を通して全身を巡り糖尿病や動脈硬化を悪化させるという悪循環を引き起こします…続きを読む
厚生労働省による最新の糖尿病の調査では糖尿病予備群の数は減ったものの糖尿病が強く疑われる人の数は増加の一途を辿っています。生活習慣に関するデータでは改善の兆しが見られるものの、その裏には高齢化が隠れていると推測されます…続きを読む
肥満である場合、肥満でない方に比べて糖尿病リスクは5倍になると言われています。しかし肥満のリスクはそれだけに留まらず高血圧や痛風、そして命に関わる心疾患や脳卒中のリスクも高め、特にBMI30を超えるとその傾向は顕著になります…続きを読む
糖尿病が進行し高血糖状態が続くとちょっとした傷でも治りにくくなってきます。それは神経障害を発症してる場合は足の切断に繋がる可能性があり、また手術が必要になった場合は傷の治りにくさや化膿のしやすさなど健康な人に比べ様々な不利があります…続きを読む
様々な合併症を引き起こすため放置すると怖い糖尿病。そんな糖尿病を早期に発見できる初期症状や自覚症状ってどんなものなのでしょうか?実は糖尿病には初期に自覚できる症状というものはなく、自覚症状が表れる頃には進行している場合が…続きを読む
糖尿病とは血液中のブドウ糖濃度が高い…いわゆる血糖値が高い状態が続く病気ですが、なぜ血糖値は高くなってしまうのでしょうか?血糖値が高くなってしまう仕組みと対策法を知り治療や予防に活かすようにして下さい…続きを読む
タバコを吸う事は糖尿病の発症や悪化のリスクを高めますが、一方で禁煙する事によって糖尿病の発症リスクが高まるという調査結果も存在します。それは国内外の信頼できるデータでも裏づけされており「禁煙なんかしないほうが…続きを読む