糖尿病はおしっこから糖が出る病気?
“糖尿”だから尿から糖が出るんだよね?
「糖尿病」という文字や響きを見聞きする限り、この病気はおしっこに糖が混じる病気という印象を抱きますよね?
実際私自身も糖尿の疑いが出るまでは「糖尿病は尿に糖が出る病気」というイメージでしたし、かつての私と同じような印象を持っている方は多いのではないでしょうか。
しかしこのイメージ、ある意味では間違っていないものの、どちらかというと間違った認識と言わざるを得ません。
糖尿病とは具体的にどういった病気で、なぜ「糖尿病」と呼ばれるのかについて詳しく見ていきたいと思います。
糖尿病はおしっこから糖が出るのか?
結論から言えば糖尿病は確かにおしっこから糖が出ます。
ただし糖尿病というのは「尿から糖が出る病気」ではなく血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度が濃くなってしまう…つまり血糖値が高い状態が続き血管にダメージを与える病気であり、尿に糖が混じるのは“結果”に過ぎません。
なぜ尿から糖が出るのかというと、一定以上の血糖値になると血液をろ過し尿を作り出す腎臓で糖が吸収しきれず尿に糖が漏れ出てくるからです。
腎臓では「糸球体」と呼ばれる毛細血管の集まりで血液をろ過し不純物などを取り除き尿として排出し、万が一腎臓でろ過しきれなかった糖は尿細管を通っている段階で再吸収されますので本来糖が尿に混じることはありません。
しかし一定以上の血糖値になると糸球体のろ過から尿細管にいたる段階でも吸収しきれずおしっこに糖が出てくるようになるのです。
尿に糖が混じるようになる血糖値の水準はある程度個人差があるもののおよそ170mg/DL前後となります。
健康な人であれば食後でも血糖値が140~150ml/DLを上回ることはほとんどなく、一方で糖尿病の方は170mg/DLを上回る場面が多くなるためおのずと尿に糖が漏れ出てくるようになり、それが糖尿病という名前の由来となっています。
■健康な人は血糖値が上昇する食後でも140mg/DLを上回ることは少ない
おしっこに尿が混じると即糖尿病なのか
尿に糖が混じると糖尿病の疑いが強くなるのは間違いありませんが、それがただちに糖尿病と診断されるわけではありません。
空腹時血糖値が110~125mg/DLのいわゆる「境界型」と言われる層や隠れ糖尿病(食後高血糖)だと食後の血糖値が170mg/DLを超えることも珍しくなく、この段階ではまだ糖尿病予備群であるため、その後食生活や生活習慣などを見直せば糖尿病と診断される前に引き返すことが可能です。
健康な方であっても大量に糖質を摂れば血糖値が瞬間的に170mg/DLを超え尿に糖が混じることもありますし、尿検査で尿糖が陽性になる可能性はあります。
また、一般的に腎臓の糸球体で尿が作られ尿細管を通る過程で残った糖は再吸収されますが、この再吸収の能力が弱い方の場合正常な血糖値の範囲内でもおしっこに糖が混じることがあります。
こういったケースは「腎性尿糖」と呼ばれ、腎性尿糖は糖尿病とはまったく関係がなく、また名前を聞くと「腎臓に問題が?」と感じてもおかしくないものの、実際はこれが何か問題を起こすようなことはないため心配する必要はありません。
■糖の再吸収の力が弱いため尿に糖が漏れ出る腎性尿糖の可能性も
糖尿病=尿に糖が出る病気ではない
これまで取り上げてきたように糖尿病とはおしっこに糖が混じる病気ではなく血糖値が高い状態が続く病気です。
糖尿病の診断基準はあくまでも空腹時血糖値やHbA1cの数値やブドウ糖負荷試験の結果を見るものであり、尿糖は糖尿病や腎臓病の可能性探るひとつの目安に過ぎず、尿糖が陽性になったからといって糖尿病とは断定できないのです。
ただし、ある程度糖尿病が進行し血糖値が高い状態が続いていると尿にも常に糖が漏れ出てくることになりますから、尿検査で糖が出た場合は血液検査などを行い糖尿病でないかどうかを見極める必要があります。
おしっこの臭いが強い・甘ったるいと感じる場合や尿の泡がいつまで経っても消えない場合などは尿に糖が混じっている可能性がありますから、余計な心配を抱え込まないために、早期に治療を開始するためにもできるだけ早く検査を行うようにしましょう。
…糖尿病はいわゆる「高血糖症」であり血糖値が高くなった結果尿に糖が漏れ出るわけですし、また尿に糖が混じったから糖尿病というわけでもないので、個人的には「糖尿病」という名前自体がおかしい気がしています。
血糖値を下げダイエット効果もあるSGLT2阻害薬
これといった自覚症状がないままじわじわと血管を蝕み続ける糖尿病。それだけに健康診断などで血糖値やHbA1cの高さを指摘されても放置している人は驚くほど多く存在するのが実情。
糖尿病治療は本来であれば食事療法と運動療法を軸に、補助としてインスリン注射や経口薬を用い血糖値を正常値もしくはそれに近い数値での安定を目指します。
そうすることで体重の減少・維持と血糖値・HbA1cの効果が望めるから。しかし現実問題として食事制限や運動療法は決して楽なものではなく、またそれを一生続けなければならないという終わりなき苦行でもあります。
そういった背景に加え、受診するのが面倒くさい、行くたびに医師に「痩せなさい」と言われる…などの理由から病院から足が遠のいている人も多いのではないでしょうか。
しかし、当サイトで口を酸っぱくして述べているように、糖尿病は様々な合併症を引き起こす極めて恐ろしい病気です。血糖値が高い状況はもちろん、糖尿病リスクを高める肥満も放置するべきではありません。
もしどうしても病院に行きたくない場合は、個人輸入代行業者を通じ、日本でも処方されているSGLT2阻害薬「フォシーガ」を購入するという方法も。
SGLT2阻害薬は血液中の糖を積極的に尿と一緒に排出するという画期的な糖尿病治療薬。
従来の経口薬のように細胞内に糖を取り込むインスリンに頼ることなく血糖値を下げられるため、1日250~400kcal相当のダイエット効果があることが複数の臨床試験で実証されています。
それだけに健康な人がダイエット目的で使用する事例が後を絶たないほど。
本来であれば医療機関を受診し、適切な治療と指導を受けたうえで治療薬を処方してもらうべきところ。しかしそれができないようであれば、最低でもフォシーガなどで血糖値や体重の低減を図ってほしいと感じています。
あわせて読みたい関連記事
糖尿病患者の平均寿命は健康な方に比べ平均で10年短いと言われています。しかしそれはあくまでも「平均」であり、しっかりとした治療を行い血糖値をコントロールできれば健康な方と変わらない寿命を全うできます…続きを読む
糖尿病の多くは血液検査での血糖値やHbA1cの数値で発見されますが、これらの数値が正常であるにもかかわらず高血糖の時間が長い「隠れ糖尿病」の場合があります。隠れ糖尿病は空腹時血糖値では表れづらいものの、食後に血糖値が跳ね上がり減少も緩やかという…続きを読む
糖尿病の診断するのに用いられるのは血糖値とHbA1cで、それぞれには明確な基準があります。10時間以上絶食し測る空腹時血糖値は126mg/dL以上、HbA1cは6.5%以上という基準を両方満たせば糖尿病と診断され、片方の場合は再検査を経て判断することに…続きを読む
糖尿病は全身の血管にダメージを与え血流を悪くする上に免疫力も低下するため歯周病の原因になります。そしてその歯周病から歯周病菌が血管を通して全身を巡り糖尿病や動脈硬化を悪化させるという悪循環を引き起こします…続きを読む
厚生労働省による最新の糖尿病の調査では糖尿病予備群の数は減ったものの糖尿病が強く疑われる人の数は増加の一途を辿っています。生活習慣に関するデータでは改善の兆しが見られるものの、その裏には高齢化が隠れていると推測されます…続きを読む
肥満である場合、肥満でない方に比べて糖尿病リスクは5倍になると言われています。しかし肥満のリスクはそれだけに留まらず高血圧や痛風、そして命に関わる心疾患や脳卒中のリスクも高め、特にBMI30を超えるとその傾向は顕著になります…続きを読む
糖尿病が進行し高血糖状態が続くとちょっとした傷でも治りにくくなってきます。それは神経障害を発症してる場合は足の切断に繋がる可能性があり、また手術が必要になった場合は傷の治りにくさや化膿のしやすさなど健康な人に比べ様々な不利があります…続きを読む
様々な合併症を引き起こすため放置すると怖い糖尿病。そんな糖尿病を早期に発見できる初期症状や自覚症状ってどんなものなのでしょうか?実は糖尿病には初期に自覚できる症状というものはなく、自覚症状が表れる頃には進行している場合が…続きを読む
糖尿病とは血液中のブドウ糖濃度が高い…いわゆる血糖値が高い状態が続く病気ですが、なぜ血糖値は高くなってしまうのでしょうか?血糖値が高くなってしまう仕組みと対策法を知り治療や予防に活かすようにして下さい…続きを読む
タバコを吸う事は糖尿病の発症や悪化のリスクを高めますが、一方で禁煙する事によって糖尿病の発症リスクが高まるという調査結果も存在します。それは国内外の信頼できるデータでも裏づけされており「禁煙なんかしないほうが…続きを読む