ペットボトル症候群(急性糖尿病)は治るのか?
ついついがぶ飲みしてしまう清涼飲料水
仕事やスポーツなどをやっている最中や終わった後など、喉の渇きを潤すためについついやってしまう清涼飲料水や炭酸飲料のがぶ飲み。
カロリーゼロや糖質ゼロでないジュースは非常に多くの糖質を含んでおり、代表的な炭酸飲料であるコーラは500mlペットボトル1本でおよそ角砂糖15個分の糖質が含まれており、がぶ飲みすると急激に血糖値を上昇させます。
そんな飲料水を多量に摂取すると、体の処理能力をオーバーし血液中に糖が溢れ腹痛や吐き気などの症状を引き起こすことがあります、これをペットボトル症候群(急性糖尿病)といいます。
私自身夏場に仕事中ろくに水分を摂らず、休憩時間に一気にジュースを飲み干すと何ともいえない体のだるさとシクシクとした腹痛に見舞われることがありましたが、今思えばあれも急激に血糖値が上昇した結果のものなんだと理解しています。
重篤になると命の危険もあるペットボトル症候群。これを起こさないためにも正しい知識を身に付けジュースの飲み方には気を付けるようにして下さい。
ペットボトル症候群とは
ペットボトル症候群とは「ソフトドリンク・ケトアシドーシス」とも呼ばれます。
日常的に清涼飲料水を多く摂る人などがなりやすく、夏場などに多量のジュースを飲むことで急激な血糖値上昇に見舞われ発症することが多いためペットボトル症候群という名前で呼ばれるようになりました。
発症のメカニズムは、多量の清涼飲料水などを摂取することによって血糖値が非常に高い状態になると浸透圧から血液が体の水分を奪うようになり喉が渇くようになるのですが、この喉の渇きを癒そうとさらに清涼飲料水を飲んでしまうことによってペットボトル症候群は起こります。
この状況では血糖値が400、500mg/DLあることも珍しくなく、この高血糖下で膵臓は血糖値を下げようと必至にインスリンを分泌しますが、それが続くと膵臓が疲弊しインスリン分泌能が低下、インスリンの量が著しく減少することによって細胞に糖が取り込まれなくなります。
そうなると体は筋肉や脂肪を分解し糖に代わるエネルギーを作り出そうとしますが、その際に作られる「ケトン体」が血液中に溢れ腹痛や嘔吐、意識の混濁などが引き起こされ、最悪の場合死に至ることもある恐ろしい症状なのです。
■膵臓が疲弊しインスリンが減ることによってケトン体が増え発症にいたる
ペットボトル症候群はどんな人がなってしまうのか
ペットボトル症候群は急性糖尿病ということもあり若く健康な人がいきなり発症してしまうことがあるとされていますが、実際は肥満や食後高血糖など糖尿病のリスクを持っている方に発症する場合がほとんどです。
本人は糖尿病の恐れがあることに気づいていない状況でペットボトル症候群によりいきなり糖尿病が発症するようなイメージでしょうか。
本当に健康な人というのはたまに清涼飲料水をがぶ飲みしたところで膵臓がしっかりインスリンを分泌し急激な血糖値上昇はほとんど起こりません。
ペットボトル症候群になってしまう人というのは日常から清涼飲料水を多く飲むことによって膵臓が疲労しており、それが限界を超えるとインスリンが正常に分泌されなくなり「血糖値急上昇→喉の渇き→飲料水を飲む→血糖値がさらに上昇→喉が渇く」という悪循環を引き起こしてしまうのです。
これは毎日ジュースを飲んでいるからといって必ず発症するわけではなく、毎日に順ずる頻度で2リットル以上飲むような人が危険と考えてください。
コーラやカルピスウォーターなどの飲料水は500mlで50~60gの糖質を含んでおり、この糖質の量というのはご飯茶碗一杯分に相当し、2リットル飲むと糖質は200~240gに達し、これは1日に必要な糖質量(200~260g)とほぼイコールになるほどの量になり、カロリーも800~900kcalと1日に必要なカロリーの約半分に相当します。
ここに食事が加われば明らかな糖質・カロリー過多となるため、普段から清涼飲料水を多量に飲む方は糖尿病リスクを内包していると言っても過言ではないでしょう。
■2リットルのジュースは1日分の糖質と必要カロリーの半分を摂取する計算に
ペットボトル症候群は完治するのか?
ここで気になるのが「ペットボトル症候群は治るかどうか」ではないでしょうか。
生活習慣の乱れなどから発症し糖尿病の90%以上を占める2型糖尿病は慢性的な糖尿病でもありこれを完治させることは現代医学では難しいものの、急性糖尿病であるペットボトル症候群であれば原因を取り除けば完治は可能な印象を受けるかもしれません。
確かにペットボトル症候群による急激な高血糖は清涼飲料水の摂取を止めインスリン療法や薬物療法を取り入れることによって急速に回復しますが、一度糖尿病になってしまった以上健康な人とまったく同じ状態に戻るのは厳しいというのが現状です。
なぜかというと、ペットボトル症候群になってしまう段階でインスリンを分泌する膵臓の疲労は限界に達しており、インスリン注射などによって膵臓を休ませたとしてもインスリン分泌能の完全な回復は難しいからです。
つまり、ペットボトル症候群によって400にも500にもなってしまった血糖値を下げることは可能であるものの、一度なってしまった糖尿病の完治は難しく、程度にもよりますが今後は肥満の解消やカロリー制限などの食事療法を軸とする血糖コントロールが必要になる場合がほとんどです。
通常の2型糖尿病同様、予防がなにより重要になります。
■一般的な糖尿病同様ペットボトル症候群にならないことがなにより重要
ペットボトル症候群を予防するために
食事によって一度に多量の糖質を摂ることは満腹中枢の働きなどで難しいものの、多くの糖質を含む清涼飲料水では比較的容易にそれが可能になってしまうことがペットボトル症候群発症の大きな要因となっています。
ただ、これを回避するのは非常に簡単で、今まで喉の渇きを潤すために飲んでいた普通のジュースをお茶や水、ゼロカロリーの炭酸飲料に置き換えればいいのです。
巷には「カロリー・糖質ゼロでも多少は含まれている」として不安をあおる文字が躍っており、確かに糖質やカロリーゼロとなっているものには微量の糖質やカロリーがあるものの、糖質ゼロを謳うものであれば糖質の量は500mlペットボトルで最大2.45gに過ぎず普通の清涼飲料水の50~60gに比べると圧倒的に少なく、健康な方であればこれを仮に2リットル飲んだところでなんの問題もない数字となります。
ゼロカロリーのジュースに使われるアスパルテームなどの人工甘味料が危険という意見も散見されますが、これは通常ではありえないような量を摂取したことを想定し危険を煽っているだけのもので現実的な量で問題になることはまずありません。
微量の人工甘味料より大量の糖のほうが人体にとってはるかに危険なので、こういった声に惑わされず上手にゼロカロリー飲料を活用するようにして下さい。
ただ、基本的に普通のものであろうがゼロカロリーであろうがジュースが体に良くないことは間違いないので、可能な限りお茶などに置き換え清涼飲料水はほどほどにするのがペットボトル症候群を防ぐ上で重要になります。
血糖値を下げダイエット効果もあるSGLT2阻害薬
これといった自覚症状がないままじわじわと血管を蝕み続ける糖尿病。それだけに健康診断などで血糖値やHbA1cの高さを指摘されても放置している人は驚くほど多く存在するのが実情。
糖尿病治療は本来であれば食事療法と運動療法を軸に、補助としてインスリン注射や経口薬を用い血糖値を正常値もしくはそれに近い数値での安定を目指します。
そうすることで体重の減少・維持と血糖値・HbA1cの効果が望めるから。しかし現実問題として食事制限や運動療法は決して楽なものではなく、またそれを一生続けなければならないという終わりなき苦行でもあります。
そういった背景に加え、受診するのが面倒くさい、行くたびに医師に「痩せなさい」と言われる…などの理由から病院から足が遠のいている人も多いのではないでしょうか。
しかし、当サイトで口を酸っぱくして述べているように、糖尿病は様々な合併症を引き起こす極めて恐ろしい病気です。血糖値が高い状況はもちろん、糖尿病リスクを高める肥満も放置するべきではありません。
もしどうしても病院に行きたくない場合は、個人輸入代行業者を通じ、日本でも処方されているSGLT2阻害薬「フォシーガ」を購入するという方法も。
SGLT2阻害薬は血液中の糖を積極的に尿と一緒に排出するという画期的な糖尿病治療薬。
従来の経口薬のように細胞内に糖を取り込むインスリンに頼ることなく血糖値を下げられるため、1日250~400kcal相当のダイエット効果があることが複数の臨床試験で実証されています。
それだけに健康な人がダイエット目的で使用する事例が後を絶たないほど。
本来であれば医療機関を受診し、適切な治療と指導を受けたうえで治療薬を処方してもらうべきところ。しかしそれができないようであれば、最低でもフォシーガなどで血糖値や体重の低減を図ってほしいと感じています。
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